通りすがりの旅芸人

秋刀魚の味の通りすがりの旅芸人のレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.4
 小津ってなんだかムズカシそ~
と思っているあなた。

 これ、公開時は20代の若い人たちもみにいった、お洒落なデート映画だったんですよ。
きっとカップルでみにいったあと、
「結婚したら、お姑さんお舅さん抜きでこんな生活したいわあ、ね?、太郎さん(婚約者)」「……(太郎)」みたいな話をして、喫茶店でクリームソーダ飲んで門限前に帰る…みたいな。

そんなことを想像しながらツッコミみると、一層味わい深いですよ

 わたしはこの作品を「小津の嫁にいっちゃえムービーシリーズ」の一作に位置付けて、いまの映画に疲れたときにみてます。

 いまの映画って映像が凝ってたり、物語にいろんな仕掛けがあったり、やたら号泣激怒暴力レイプの安売りで、疲れるんですよ。

 この映画というか、小津の映画では、出てくる役者さんたちの台詞が棒読みのように感じたり、アングルがいつも似たようなんだったり。小津アングルともいいますが。

会話も「嫁に行け」ばっかりだし(笑)

しかし、それが、しみじみとよいのです。

スルメを何度も噛んで味わうような慈味が。

それでいて、ハッとする一言もある。
 戦争がなかったかのようにみえる東京の風景のなかで、ちらっとみえる戦争の影だったり…
 笠智衆がバー(岸田今日子がマダム)で戦争のときの部下(加東大介)と、「戦争で勝ってたらニューヨークも日本ですね」なんて会話をしてるときに、「でも負けてよかった。バカなやつが威張らなくなったから」というくだりが。
 多くの日本人が敗戦時に感じたであろう真実が込められている
 
 それでいて、ほのぼのしたり。
(中井貴一のお父さんで若くして亡くなった)佐田啓二が、岡田茉莉子演じる妻にゴルフクラブを買う許可をもらって喜ぶシーンなんか、最高です

とにかく小さな日常への慈しみが感じられる傑作
 
サンマは出てきませんが、「嫁に行け」という台詞が何度出てきたか数えて見ると面白いです