やま

秋刀魚の味のやまのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.6
小津安二郎最後の映画。
彼の映画は、ほんとに染みる。心に染みる。家族というものをずっと描いてきて、暖かい家族模様であったり、様々ものを描いてきたのに、最後の最後にこんな切ない映画にするなんて。最後まで独身を貫いた小津に娘が結婚していなくなるそんな気持ちが分かるのかとか思うのだけど、分かるらしい。だから僕にも伝わる。

奥さんを亡くし、独り身になったお父さん。そんなお父さんの面倒をみるために残る娘。周りの人に娘を早く結婚させなさいと急かされる。自身の再婚も勧められる。
彼がバーの奥さんが良いのだと、お母さんにどこか似てるんだと周りの人に言ってるが、息子曰く似てないらしい。そこからお父さんは、奥さんが忘れられないんだろうなとか考えさせられた。奥さんの姿をまた誰かを通してみたいのかなと。

仲間とのブラックユーモアたっぷりな嘘とか会話も面白い。小津安二郎の映画って何か大きなことが起きることはないけど、見入ってしまう。それは構図の美しさだったり、心地いい昔を感じさせる音楽だったり、色使いであったり、間に挟まれる風景であったり、登場人物たちの立ち振る舞いだったり、最高にいいとこづくし。

酔っ払って帰ることの多い笠智衆さん演じるお父さん。しかしラストの彼の振る舞いは大きな寂しさも持ち帰ってきたような雰囲気で、とても切なくなった。少し涙を浮かべてるようにもみえるラストだった。
あの大きな広い家にひとりぼっちはとても寂しいよ。

やっぱり小津安二郎監督の映画が一番好きだなぁ。
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