星降る夜にあの場所で

無人の野の星降る夜にあの場所でのレビュー・感想・評価

無人の野(1980年製作の映画)
4.7
崇敬するIホール初代総支配人様 34

ここ何年か、アジア圏(韓国・中国・台湾以外の)の作品が積極的に劇場公開されたりソフト化されていますよね。
この傑作もそろそろ再上映もしくはソフト化されるのでは…
といった仄かな期待と、万が一現実になった暁には是非ご覧になって頂きたいという思いを込めてupしてみました。

ベトナム戦争に関して米国製作による作品しかご覧になったことのない方は本作鑑賞後、ベトナム戦争に対しての固定観念が音を立てて崩れ去ります。
他の戦争に関しては、大抵両国の解釈による作品がそれぞれ製作されているので第三者的な立場で作品を鑑賞し真実に近い形で戦争を理解することが出来ます。
ところがベトナム戦争に関してだけは、極めて一方的な解釈をすり込まれてしまっているように思います。

ただこの作品をお薦めしたい一番の理由は、戦争映画として優れているからというわけではなく、一組の夫婦と赤ん坊がベトナムの湿地帯で生活する様子が息をのむような美しすぎる映像(モノクロ)で撮影されているからです。
サタジット・レイを彷彿させるような超美映像です。
「ルイジアナ物語」も頭をよぎります。

のどかで穏やかな毎日を切り裂くような、米軍ヘリのプロペラ音…
低空飛行の爆撃から巧みに身を隠しながら必死に逃げる様子はハンパないスリルです。
ラストに至っては、ベトナム人の逞しさと底力をまざまざと見せつけられます。

多少のプロパガンダはお互いさま、大人の事情で米軍兵士を演じているのがアジア系の役者だったりするのはご愛敬としても、ベトナム戦争の真実の1ページを切り取ったまぎれもない傑作☆彡