カトゥ

バーバー吉野のカトゥのレビュー・感想・評価

バーバー吉野(2003年製作の映画)
3.5
この監督の作品、例えば「かもめ食堂」も「レンタネコ」もそうなのだけれど、ほっこりした素敵な世界である事は確かなのに、「その世界観を受け入れている人間・その世界に受け入れられた人間」と「そうでない人々」とをばっさり分けたような雰囲気があって、殺伐としているというか、気にしはじめるとほんのりと怖くさえある。
この境界は作中の人物や演出ではなくて、映画作品そのものと(つまり制作者の意図と)、それを楽しむ自分達の中にある。

では本作は、というとやはりその、夢の国の住人と、それ以外、の境界が明確に存在する。でもちょっとした毒(土地と常識に縛られた田舎者の気持ち悪さ!)と、徹底的にとぼけたビジュアルで、殺伐さもおかしみのスパイスになっているように思えてくる。不思議なバランス。

いや、自分がほっこりした映画が大好きなことに嘘はない。ただ一連の作品や類似作が、ある種の不自然であることは、漠然と気にはなっていたのだ。
そして、そこに潜む「ほっこり世界に隠された違和感」すら楽しめる本作は、紛れもない異色作であり、そして他の作品との比較でそれぞれの面白さが深まる点で、特別な価値があるのではないか。その辺り、もっと上手く説明できたら良いのになあ、と歯がゆく思いながらスタッフロールを眺めたことを覚えている。
好きな映画です。
カトゥ

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