ゆーさく

さよなら、さよならハリウッドのゆーさくのレビュー・感想・評価

3.4
かつてのスゴ腕映画監督が、プロデューサーである元妻の取り計らいで、復活を賭けてハリウッド大作映画に挑むも、撮影開始前日にストレス性の失明に陥ってしまう。
何とか失明をごまかしきり、映画をヒットに導くことは出来るのか!という話。


いつもの調子で、軽いノリながら辛辣な皮肉を詰め込んだウディ・アレン作品。

プロデューサーである元妻への未練タラタラ、神経質で小心者、心配性で偏屈で髪も薄い。
命に関わる病気以外は全部患ってるかのような災厄にまみれた男を演じるウディ・アレン。
弱々しくて面倒くさい男の演技はお手のもの。ていうかいつも通り。
そして失明の演技がやたら上手。


ハリウッド映画も、芸術映画も、女の浮気性もアッパッパーギャルも、盲目も自分自身も他人も全部皮肉のターゲット。
全方位コケにするスタイルである意味誰にも媚びてないカッコよさがある。


現場に出入りする素人の中国人通訳にだけ失明したことを明かして手伝ってもらい、何とか撮影を乗り切るアレン。

今のカットどうだった?って通訳に尋ねるのがオモロい。
通訳も通訳で「1テイク目よりはマシですけど、まだ迫力不足ですね」とか意外とノリノリで答えてて笑う。


撮影終了後、やっと失明は回復する。

久しぶりに観た景色は何て素晴らしいのだろう、何もかもが美しいよ!と喜んで言った直後に、完成した映画を観て「死にたい…」と手のひら返すアレン。
「映写室に観客が押し入り、フィルムを奪って海に投げ棄てられるような出来だ」と回りくどい比喩で、クソ映画を嘆くアレンが面白い。


監督の目が見えなくても勝手に映画は完成していくハリウッドスタイルの映画作りをバカにしながら、
叩き込むようなハッピーエンドで締めくくり、メタ的に本作もハリウッドスタイルに乗っ取ったバカ映画だよ、と自虐する。


明るくのんびり、ちょっとオシャレ。
最近ニューヨークからパリに拠点を移したアレン自身をパロディーで見せる、アレンにしか撮れない独特の映画になってる。
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