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蟻の兵隊のellieのレビュー・感想・評価

蟻の兵隊(2005年製作の映画)
4.0
大戦後軍命で中国山西省に残った2600人もの日本兵。中国内戦に巻き込まれ、長く辛い抑留生活の後にやっと帰国した彼らを待っていたのは、軍人恩給のない逃亡兵という屈辱的なレッテルだった。
元残留兵士の奥村和一氏(当時80歳、2011年死去)の再びの中国訪問を追いながら、戦争の真実を追求した池谷薫監督渾身のドキュメンタリー。


未だに、思い出すのも辛い苦しい映画だ。日本という国が中国にしたこと。目を背けたくなる逸話が、至るところにある。だが、誰よりも苦しく辛かったのは奥村さん本人だろう。忘れてしまいたい過去を必死で探り当てながら、殺したいほど日本兵を憎む現地の人々に謝罪する姿には言葉を失った。彼が人である限り真実を追い求めたように、今こそ私たちはその痛みを知る必要があるのではないかとも思う。

蟻の兵隊とは、たとえ何が起ころうと命令のまま前進するしかなかった当時のこの国の兵士の現状を表している。
戦争経験者の生の声を聞けるうちに、このような史実を少しでも多く伝え広め、戦争の浅はかさ、残忍さを再確認してゆくことの大切さを痛感する。
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