マーくんパパ

瀬戸内ムーンライト・セレナーデのマーくんパパのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

阿久悠の瀬戸内3部作、前2作(瀬戸内少年野球団、少年)も大好きなお気に入り映画。戦後のノスタルジックムードが堪らなくイイ。阪神淡路大震災の復興現場から圭太が少年期を回想、兄の戦死遺骨を埋葬する為に淡路島から故郷宮崎まで家族旅行を兼ねて旅する圭太少年一家の道中記。別府へ向かう汽船甲板でのグランドホテル形式の人々の交わりが出色。闇屋の鳥打ちさん、映写技師の巡回さん、訳あり復員さん、芸者に身を落とそうとする小町さん、サーカス怪人さんに教え子たちの戦死に耐えられない校長さんetc。圭太の手の平に写すGHQ禁止の「阪妻チャンバラ映画」と、堅物駐在父が世話になった鳥打ちさん助けるチャンバラ擬き退治顛末の妙味。子供には分からない大人の恋愛映画「カサブランカ」の可笑しみ。ガチガチ戦前家父長親父が自由平等な戦後価値観に戸惑いながらも馴染んでいく微笑ましさ。大事に抱えて来たお骨箱の中身は歯ブラシ一本という無情の正体を受け、現在の神戸復興現場で働く人夫さんたちの朝の歯磨きシーンに希望をつなぐエンディングの巧さ、「ムーンライトセレナーデ」哀切メロディ、映画作りをとことん心得た篠田監督の秀作でした。ひなの映画デビューにしてフランキー堺の遺作。