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ブルークリスマスのmitakosamaのレビュー・感想・評価

ブルークリスマス(1978年製作の映画)
3.6
見たかったやつ!アマプラにあったので初鑑賞しました。監督・岡本喜八、脚本・倉本聰という布陣で作られたSF大作。いやSFの名を借りた架空政治ミステリーとでも言おうか。

物語はUFOが出てくるSFに間違いないが、特撮などが一切使われていない。あくまでUFOに対するリアクションが描かれた映画なのだ。怪獣が一切出てこない怪獣映画「大怪獣東京に現る」に近い構成とも言える。

UFOを目撃した人は、何かしらの作用により血液の色が青色に。エヴァのBLOOD TYPE: BLUEが引き合いに出されるけど、それ以上にラーゼフォンだよな。

群雄劇だが、主人公に値するキャラクターが主に2人。
仲代達矢が演じる国営放送の報道部員。
勝野洋が演じる、竹下景子と恋人になる国防庁の軍人。

前半は主に仲代達矢のエピソードだ。青い血に関して最初は本気ではなかったが、次第に政治的な陰謀があると分かり独自に調査を開始する。途中、青い血である女優を失脚させるために麻薬疑惑をでっち上がられることも知る。
度重なる妨害工作や圧力がありパリ支局に飛ばされてしまう。

後半は主に勝野洋のエピソードだ。頑なな軍人ではあるが、恋人となった女が青い血であり二人で逃げることも画策するが、世界規模での青い血への粛正が開始され、命令に忠実に恋人を射殺してしまい自身も撃たれ死ぬ。

UFOの影響で青い血になるのは良いとして、UFOに乗ってきたと思われる宇宙人の目的とかは一切説明されない。というか宇宙人自体、1カットも出てこない。
青い血の人間が現れたとして、何に怯え、何のために排他的になるのか、その理由も説明はない。
見る側の想像力に委ねている訳でもない。
だが今作は、そういう説明不足がマイナス要因になっていない。何故ならこの不透明さこそが今作のテーマなのだと思う。世界中が混乱し、政治的に謀略が仕込まれ、差別と暴力が繰り広げられることに明確な責任者が居る訳ではない。世界に蔓延る理不尽とは不透明であるが故に排除できないのだ。
この映画は、倫理感や正義・道徳が如何に脆弱化を物語っている。

ただ、勝野・竹下カップルの終末は描かれたが、仲代達矢が最後どうなったのかは描かれていない。そこは不満かなぁ。マスコミキャラとして世界の陰謀に挑んだ男が、結果としてその壁を打ち破ることが出来ずに中途半端に終わってしまうというのは、確かにリアルかも知れないが。
でも映画の主人公なんだから、世界の陰謀を人民に広く伝える描写は欲しかった。
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