Kuuta

黄色いリボンのKuutaのレビュー・感想・評価

黄色いリボン(1949年製作の映画)
4.0
騎兵隊をメインに置いた西部劇。賞金稼ぎものと異なり、何十頭もの馬が隊列を組んで荒野を疾走するビジュアルが最大の魅力だろう。アカデミー撮影賞受賞作。

ジョン・ウェイン演じる将校は、字の綴りが覚えられない男とされる。政治家のように歴史に残る権力者ではなく、ラッパを使ったり、規則の穴を突いたりと、無形の力で創成期のアメリカを支えた名もなき軍人として描かれている。

美しい荒野の中で、多彩な馬のアクションが画面を作っている。ラッパの招集で士官だけが走り出したり、偵察隊が隊列から離脱したり、合流したり。

長い隊列が小隊に分かれると、全体を捉えていた画面は部隊ごとのショットに分断され、ストーリーも分岐していく。一つ一つの動作を丁寧に画面に収め、アクションの力で脚本を動かしているのが素晴らしい。

2列なって馬で進軍するシーン、会話の相手が入れ替わったり、画面外から別の人が加わったり。会話も全て馬の動きありきで作られている。また、「白衣」の医者や女は負傷兵を馬車の上で治療する。本来どこかに腰を据えるはずの「家」すら、隊列の中で移動を続けている。

若い将校がインディアンに追い詰められるが、勢いを付けて大きな穴を飛び越えるシーン。飛躍によって彼の成長を示す。引きで収めたワンカット映像が、実に美しく決まっている。

インディアンの蛮行を見て、ウェインはタバコを噛み締める。隊を辞めたがっていた若い将校は、それを隣で見て、タバコを分けてもらう。タバコの受け渡しだけで心境の変化を描いている。

ウェインがインディアンの酋長と交渉する場面でも、タバコの交換が行われる。
騎兵隊=善、インディアン=悪ではなく、将校も酋長も同じように、交換を通じたコミュニケーション可能な相手として描かれている(劇中で唯一残酷に殺されるのは、私欲に溺れたアメリカ人)。

前線基地でのパートはややセリフが多く、勢いが落ちる印象。特に女性を巡る三角関係の下りは、若者への継承エピソードなんだろうけど、ちょっと物足りなく感じた。盟友が酒場で大暴れするクライマックスも、「投げ」たり「飲ん」だりフォード演出が炸裂しているものの、本筋からはやや浮いている印象だった。

ウェインが演じた退役前の将校は、「ロッキー・ザ・ファイナル」よろしく亡き妻の墓の前に小さな椅子を置いて、思い出を語りかけている。ささやかな居場所を見つけ、ラストにもう一度墓を訪れるのも一緒。老いと共にアメリカから消えるヒーローの哀愁を描いた作品でもある。81点。
Kuuta

Kuuta