めしいらず

満員電車のめしいらずのレビュー・感想・評価

満員電車(1957年製作の映画)
3.2
社畜たちは満員電車に押し込められて今日もぞろぞろと会社へ向かう。秀でることより調和を重んじ目立たぬことが美徳とされ、高学歴は寧ろ出世の邪魔になる。”怠けず休まず働かず”。仕事をテキパキこなすことも無駄な予算を削ることも求められてはいない。個性も要らない。ベルト・コンベアを流れる同じラベルを貼られたビール瓶が象徴的だ。主人公は封建的な父の教えに従って最高学府を出、独立独歩を掲げて意気揚々と社会に踏み出したはいいけれど、現実は父の言っていたものとは全然違っていた。多くの者たちが心を病み、中には命を絶つ者とてある。精神科の必要度が増す未来は既に約束されていた。何もない殺風景な社宅で主人公は晴れ晴れとした表情でどんどん社会から逸脱し落魄していく。どちらの側が精神病者なのかは藪の中だ。和製コメディらしからぬリズミカルな会話のシュール感や、漫画的に極端な画作りのセンスが光り甚だお見事。
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