菩薩

女狙撃兵マリュートカの菩薩のレビュー・感想・評価

女狙撃兵マリュートカ(1956年製作の映画)
3.8
画面が暗くてちょっと何やってるか分からないシーンも多々あるものの、中盤以降はひたすらイチャコラしてるってのはよく分かるくらいひたすらイチャコラしている。革命に闘志を燃やす赤軍派の豪傑天才スナイパーのマリュートカ、かたや青い眼をした貴族のボンボンである白軍派の将校、立場も思想も身分も違う二人に自然と芽生えていく愛、だが時代と運命がそれを赦そうとはしない。なんせマリュートカがいい女(って描き方)、楠本まきのジェンダーバイアス発言に沸く昨今、もしかしたら反感を抱く方もいらっしゃるかもしれないが(実際「女のくせに」ってセリフもあるくらいだから)、やれ風邪をひいたら看病してくれる、煙草を吸いたいと言えば差し出してくれる、家事全般得意と、戦いの最中、かわゆい歳下ブルーアイズ青年を前にして、母性爆発さくら屋状態へと突入していく。一方若い将校はてんでダメ、戦いやめて別荘で暮らさへん?とか、もう世間とかどうでも良いからイチャコラせぇへん?とか、将校たる自覚0、魚すら捌けない。イチャコラムードも一転、一気に険悪モードに突入するものの…とは言え走り出したラブは止められない…って、もう戦争映画である事すら忘れかけた時に、物語は急転直下、現実の撃鉄が起こされる事となる。「戦争(この場合革命だが)さえ無ければ」と、チュフライはこの姿勢をひたすら貫いているのだろう、最後は女であり母になる事よりも、戦士としての性が勝ってしまったマリュートカ、あんなに幸せだった砂浜と波打ち際での虚しさに、心を撃たれる事となるだろう。
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