吉太郎

ペパーミント・キャンディーの吉太郎のレビュー・感想・評価

4.0
『戻りたい』そう言って遡っていく。逆走のような、後進するような電車というのが常にネガティブな印象を落とし込んでたなぁ。

初めの、轢かれる瞬間の形相の絵面と、最後(あるいみ最初)の穏やかな表情のコントラストがあまりに悲しい。
遡って、あぁたしかにこの瞬間が人生で最も美しく満ち足りた瞬間だったと噛み締めているのだと思うけど、遡らずとも当時既にそう予感していたようにも見える。この先の人生、この瞬間を越えることはないだろう、それくらい今、幸せだ、穏やかだ。って。
キムヨンホが変わっていった理由を新しい順に見せられていくので吐きそうになる。

そういう瞬間はたしかに、10代から20代前半にほとんど集約されているようには思うけど、ほとんどの人はあたかも今この瞬間が最高である、最高の瞬間は常に更新されていくって自分に折り合いをつけながら生きていけるよなぁ。もちろん事実更新され続ける人もいるが、眩しくて直視できない。青春時代は青春時代、いまは今の幸せって。全くの別軸であっても、子供とか家族を持ってある種自分の人生はこの瞬間が最も幸せと思いなおせる人が多い中で、そっち側になれないなんとも苦しい人もいる。あの事件のシーンでの泣き方を見て、ヨンホの根本が終わってしまったように思う。

観客に対して救いを一切つくらず、地の底まで突き落とすその執念のようなものが素敵でした。
ペパーミントキャンディを美味しいと錯覚しなければやりすごせない。

ただ、電車のレールは修正できないけど、試しに電車降りればいいやん、とも思う。
吉太郎

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