ちろる

ペパーミント・キャンディーのちろるのレビュー・感想・評価

4.0
大切なものは君の笑顔とペパーミントキャンディと、名もない花。
多くを望んでない。
だから幸せはすぐ手の届く場所にあると信じてた。

主人公の苦しみを追体験する為に7つのパートに分けた過去のシークエンスを見せられる度に主人公の内面世界に閉じ込められて苦しい。
「光州事件」というと、ソン・ガンホ主演の「タクシー運転手 約束は海を越えて」で初めてその史実を知ったくらい。
あの時は軍の非人道的なやり口に震えるばかりだったけど、政府の駒として、意に反して市民たちを追い詰めなければならかった一部も、結局は政府の犠牲者だったのだ。

愛する人と共に暮らし、カメラで時々名もなき花を撮り続ける。
そんなささやかな「夢」がちょっとした歯車の狂いで叶わなくなってしまう人生の恐ろしさを、救いのないラストから見せてしまうという大胆な手法によって、より残酷に見せつけている気がするが潔い。
ハートフルな哀愁は徹底的に外し、抜け殻のようになった主人公が人間らしかったあの頃までの回想を淡々と見せながら、ラストと始まりの川縁のキャンプシーンを描くことで、主人公キムの純粋さがより際立つ見せ方となっていた。
それにしてもシークエンスごとに全く違う表情を見せるキム役のソル・ギョングは、まさしく目を見張る怪演。
イ・チャンドン監督ならではの適度な暗さと残酷さは、彼の狂気の演技にフィットする。
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