このレビューはネタバレを含みます
戦争というものは敵に残酷なことをするだけではなく
仲間や家族にまで残酷なことが出来てしまう
残酷なことが言えてしまう
強烈に狂った状況のことを言うのだな。
母が娘に浴びせる言葉や
赤ちゃんを産んだばかりの母に浴びせる言葉
飛び交うあらゆる言葉が
とてつもなく哀しくて哀しくて
こんなにも淋しくて淋しくて。
狂った環境の中では自分も狂ってしまわなきゃ
生きのびられない。
恐ろしく虚しい状況から逃れられない絶望感。
狂気から正気に戻った瞬間の圧倒的罪悪感。
悪夢に苛まれる日々。
解りあえない苦しみ。
癒し合えない悲しみ。
戦争だけではなくある一つの物事を知るには
いくつかの異なる視点から見つめてみることが必要不可欠。
本作は戦争をある一つの視点から切り取って描いている。
ある一人の女性の戦争の記憶の形として
本作に寄り添ってみる価値は十分にあると思う。