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ソイレント・グリーンのShoIkomaのレビュー・感想・評価

ソイレント・グリーン(1973年製作の映画)
3.5
 今年、2022年を舞台にしたSF映画。製作されたのは1970年代の初頭だ。50年前のクリエイターが発したエマージェンシーを、今の自分がどう受け取るのか。自分自身を試すような気持ちで鑑賞した。

 大きなテーマは、現代の現実に照らし合わせても真に迫って感じられた。少しのボタンのかけ違いで起こりうることだ。貧富だけではない格差の広がりとそれによる世界の亀裂がぼくたちを悲劇的な結末に導くのではという潜在的な恐怖は、この作品が作られた当時から地続きだ。

 小さなディテールに、むしろ興味を惹かれる。この作品の世界も地球は温暖化している。人口爆発で人が溢れ、そのなかを主人公ソーンは汗ばみながら走り回る。その暑苦しさが、この世界の生きづらさを手触り感を持って感じさせる。
 女性を「家具」と呼ぶ描写は、問題提起や「50年後も性差別は変わらない」という皮肉なのか、それともこの時代の意識の低さなのか。それは分からないが、恐らく「格差の広がり」をより強調するための描写ではあるだろう。老人を「本」として雇うのもやはり、市民層には教養が手に届かないという格差を補強する。そして彼らが主従の「従」であることが、この作品の世界観をより分かりやすくしている。豊かさは特権であり、同時に過去の遺物なのだ。

 小島秀夫監督はこの映画を取り上げ、「過去のSFは未来への警鐘にはならなかったのか」と呟いた。ぼくは「ただの空想」が好きだけど、それを守るためにも空想を空想と切り捨てない意識が必要だと感じた。
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