カルダモン

ソイレント・グリーンのカルダモンのレビュー・感想・評価

ソイレント・グリーン(1973年製作の映画)
4.1
2022年のNYを描いた近未来SF。
45年前の作品でありながら、環境汚染、人口爆発、温室効果ガスなどの問題意識は現代とさほど変わっていないことに驚く。
『ブレードランナー』のようなビジュアルこそ無いものの、のちに繋がる退廃した未来感がすでに出来上がっている。

路上やアパートの階段には足の踏み場もないほどゴロゴロと人の山が出来上がっていたり、貧困層が起こした暴動をブルドーザーでゴミのようにすくい上げる光景は遠からず現実での報道映像と重なって脳裏をよぎり、トラウマを呼び起こされた感覚。

貧困層はソイレント社が配給する合成食料『ソイレント』を食べ、電力も自転車を漕ぐなどの自家発電で賄い、満足な水さえもない生活を余儀なくされているが、アパートの一室で暮らすソーン刑事(チャールトン・ヘストン)と老人ソル(エドワード・G・ロビンソン)のコンビに、わずかな人間の活力を感じてホッとする。

とある殺人事件をきっかけにして2人はソイレント社の実態と新しい合成食品『ソイレントグリーン』の正体を突き止め、衝撃的な恐ろしい末路を知る。
個人的に恐ろしかったのは死を選んだ人間が入る最終施設に行列をなす人々と、安楽死を迎える部屋だった。
360度スクリーンに映し出される見たこともないようなかつての地球の姿。その自然や動物の美しさの中で死を迎える様子が、なんとも言えない嫌な気持ちになった。
都心部にある貸し金庫に似たお墓のように、無機質な血の通っていない風景が怖いのかもしれない。

派手な要素は少ない作品だし、演出も地味だったりするのだが富裕層の部屋のミッドセンチュリー感やマッドボマーで爆弾魔を演じたチャック・コナーの無愛想っぷりも見所。