ボブおじさん

白い肌の異常な夜のボブおじさんのレビュー・感想・評価

白い肌の異常な夜(1971年製作の映画)
3.9
前作「真昼の死闘」の撮影中、主演のクリント・イーストウッドはこの映画の原作を読み衝撃を受け、すぐさま監督のドン・シーゲルに映画化の企画を相談したと言う。

舞台は南北戦争末期、南部の深い森の中にある女子学院では、女性だけで自給自足の生活を営んでいた。ある日、12歳の少女エミーが森の中で負傷した兵士を発見する。女たちは寄宿舎に彼を運び込んだものの、北軍の軍服を着ていることに困惑するが、男は献身的な介護を受けて徐々に回復する。しかしその若い男の存在により、女たちの欲望が渦巻き始め、静かな園の女たちを狂気の世界へと導いてゆく。

なにやら艶めかしく評判の良くない邦題だが、白い肌はともかく異常な夜であることは間違いない。原題は 「The Beguiled 」魅了された者、あるいは騙された者という意味になる。誰が誰に騙されたのか、誰が誰に魅了されたのかを思うと意味深なタイトルである。

アクション俳優の看板を掲げてきたイーストウッドにとってこの映画に主演することは、新たな冒険だった。男性中心の娯楽映画を撮り続けてきたシーゲルにとっても事情は同じだ。

今までの強い男を返上して、女たちに弄ばれ遂にはと言う室内での官能的な悪夢。しかし、2人はこの新しいチャレンジを見事に成功させ、今までにないエロチックでスリリングな映画に仕上げた。

興行成績は振るわなかったそうだが、イーストウッドの新たな一面を引き出したこの映画は、イギリスやフランスで今でも傑作との評価を得ている。

百戦錬磨のタフガイも狂気に駆られた女の前では、なす術が無かったということか。いずれにしてもこの映画が次のイーストウッド初監督作品「恐怖のメロディ」に繋がったことは間違いないだろう。