『アルカトラズからの脱出』のドン・シーゲル監督とクリント・イーストウッドが再タッグを組んだ作品。原作はトーマス・カリナンの小説である"The Beguiled"。女性のみの館に一人の男性兵士が迷い込むことで生じる出来事がサスペンスフルに描かれています。本作は、フランシス・フォード・コッポラ監督の実娘であるソフィア・コッポラ監督による『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』(2017年)のリメイク元となった作品です。
ーービガイルド
原題は"The Beguiled"であり、直訳すれば「騙された者」、「喜ばされた者」、「(飢え等を)紛らわされた者」、「魅了された者」となりますが、原題の凄さはこの全ての意味が作品内容を表している点だと思います。その意味では、邦題の『白い肌の異常な夜』はキューブリックの『博士の異常な愛情』の邦題テイストに近く、"ただならぬ雰囲気"は伝わってくるのですが、原題の奥深さを捨象してしまっているように感じられて勿体ない気がしました。この点、リメイク作の邦題『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』は、原題が多義的過ぎるが故にいっそ原題のままに留めようとしたことが窺われます。
ーー総評
本作は、クリント・イーストウッドがのべつ幕なしに校長、教員、生徒に手を出して全方位から逆襲に遭うという何とも言えない物語であり、イーストウッドに理性と想像力があれば単なる美談に終わっていたのだと思います。閉鎖空間の中で増幅する複雑な感情の"あやうさ"がよく表現されていました。