Ricola

白い肌の異常な夜のRicolaのレビュー・感想・評価

白い肌の異常な夜(1971年製作の映画)
3.6
老いも若きも女は怖い…。特に男が絡むと…。
そう思わざるをえない作品である。(私も女だが)

戦争下の混乱した閉塞空間において、女性たちそれぞれの欲望は抑え込まれていた。
そこに美しい男性がやって来たら…その欲望は爆発するのである。それも悪い方向へ…。


人間とはそもそも本能より理性が、通常時は特に先行しているはずである。
そこで皆がやりたい放題本能のまま動いてしまえば、そこにはもちろん崩壊が待っている。

人物たちの心の声が時に聞こえるため、それぞれの思っていることや彼女たちの立場がすぐに整理できる。
それが説明的過ぎるため、彼女たちの表情や動きだけから心情を読み取ることが必要なくなり、少し粋でないなと思った。だが裏を返せば、それはわかりやすいともとれる。

また、フラッシュバックが効果的に用いられており、ストーリーの主軸を補うような補足情報をそこで得られる。

しかしそこで、園長先生たちの過去など、彼女たちの背負っているものが垣間見えるものの、全て見えないのがあえてよかった。

女性とはまさにそんなものなのかもしれない。
ミステリアスで二面性があり、言っていることは果たして本心なのかわからない。全てを、特に心の内の全てをそう簡単にさらけ出すことはない。

大尉に恋する少女、エミーの豹変ぶりには、子どもらしい純真さがありつつも、やはりもう女だと思わされる。

この作品は皮肉的で、人間の汚い部分がさらけ出される心理劇であって、好きなタイプの作品ではあるが、説明的過ぎる部分と、たまに感じた人物の非リアリティさ(特に大尉)に違和感を感じてしまった。

しかし、男のロマンともいえる西部劇のスターであるクリント・イーストウッドが、女性たちの欲望の的となり、破滅への危機を象徴するような役柄を演じていることに、この作品の存在意義までも感じた。
Ricola

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