さく

麦秋のさくのレビュー・感想・評価

麦秋(1951年製作の映画)
4.0
紀子三部作なる呼び名があると知って、引き続き二作目を鑑賞。戦後徐々に社会的地位を向上させてきた女性の云々…的な位置づけなんでしょう。父親より先に飯食っちゃったり、900円(今の価値でいくらくらい?)するケーキを食べたり、そういうところで当時の時代性を描きつつ、最後は、お見合い、結婚について。

それはさておき、またしても偏執的なカメラワークで、どこをどう切っても「小津安二郎」。ひたすらどっしりしたローポジション&固定で撮られるので、カット変わる前にちょっと横にパンしたりされると、「ん? 何か今の動きは深い意味合いが…?」とか勘ぐってしまいます。

前作に引き続き、ノスタルジックな気分に浸らせてくれるのですが、一方で「こういうウェットな人間関係が厭で東京に脱出してきたんだよなぁ」という思いも湧いてきて(そちらの方が強い)、「これが日本の家族の美しさだ」みたいな共感や感動は得られなかったですが気持ちにはなれなかったですが、美術館で絵画を観るように堪能させて頂きました。

志げ(東山千栄子)が「幸せ」と言う顔がひとつも幸せに見えないよ! 等、変な勘ぐりをしたくもなりますが、ダークサイドに落ちそうなので止めます。笠智衆は「じじい」のイメージしかなかったので、若い役で新鮮。紀子(原節子)が一人でお茶漬けを啜るシーンが印象的。
さく

さく