菩薩

ファウストの菩薩のレビュー・感想・評価

ファウスト(2011年製作の映画)
4.1
開始早々腐乱死体の解剖、ボタボタと零れ落ちる内臓、この時点で好き嫌いが分かれるのだろうが、もちろん大好物。原作を読んでる人からすれば「おいおい…」なお話なんだろうけど、原作もあらすじ程度にしか知らない身からすれば思った以上になぞらえてるのでは?と言う感じだったし、そもそも「自由に翻案」て宣言しているのだからその時点でソクーロフの勝ちであろう。おちんちんがお尻側についている悪魔(高利貸し)であったり、イレイザーヘッドに出てきそうなホムンクルスであったり、何よりヒロイン:マルガレーテの美しさが尋常でなく、光のない映画の中で煌々と輝く恒星として常に映画を支配している。ストーリー的には、あらゆる学問を極めた教授が、高利貸しの悪魔と魂の探求に出かけ、美しい女性に出会い、その兄を(誤って)殺し、彼女を救いたいが為に悪魔と血の契約を交わし、そして悪魔を殺す、みたいな、あくまで「みたいな」お話であって、ソクーロフ作品の中ではアレクセイ・ゲルマン(ドイツだから…?うそです。)よりの面白さを感じる。映像美に関してはもはや言う事は無いし、最後のオチも個人的には「性欲」の話なんじゃないか?なんて勘ぐってしまうけど、それが人間の生きる意味だと言われればその通りだとしか思えないし、それこそブレードランナーの「人として生きる(死ぬ)とは?」のテーマにも似通ってる様な気が。ただせっかく生まれたホムンクルスの扱いが非常に雑、どうせならマルガレーテの胎内から生まれて来てくれたら最高だったのになんて思ってしまう、たぶんヤってんだろうからファウストと。人間の業であったり、魂の存在であったり、生きる意味であったり、そんな風に捉えればそんなに難しいお話でも無いのかなと思う。
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