Kasumi

意志の勝利のKasumiのレビュー・感想・評価

意志の勝利(1935年製作の映画)
3.0
「映画、映像としては美しい」というレニ・リーフェンシュタール監督への賞賛はよく聞くけど、わたし個人は別に美しいと思うシーンはなかったです。というか美しいという言葉を使ってしまいたくないというプライドなのかもしれませんが。SS? Hitler Yugend?わからんけどその青年たちの目の力と画一性には、たしかに眼を見張るものがあります。
ワーグナーが壮大でドイツの街並みが懐かしい。

善悪という二項対立ではなくて、このコンテンツをどの形容詞でどの副詞を使って言い表すかということが彼ら、この作品を正当に?評価する上で大事なのかなあと思いつつ見ました。
このプロパガンダを作品と見て美しいものは美しいと言えるのが良いことなのかどうか。
聞き取りやすいドイツ語。約90年後の日本人にもわかりやすい単純明快さ。

ドイツ大芸術。ドイツ人らしいゲルマン人らしい骨格や顔つき、大家族。単純明快で健康。労働。そのイメージが存分に散りばめられていて、ヒトラーという人間が愛した芸術が存分に伝わってくる。
頽廃芸術と呼ばれ虐げられたものはもはやここにはない。マックスベックマンもパウルクレーもいない。キルヒナーが自殺する4年前。

これは皮肉ですが、政治家のスピーチが言葉選びに気を遣っただけでスカスカの中身なしなのはこの頃と同じだ、というか日本の政治家はヒトラー的なのかもしれませんね
最後のヒトラーの演説、村上龍の愛と幻想のファシズムを思い出した。言語だけでこれを表現できるのは素晴らしい。それともこのヒトラーの残像ありきの愛と幻想のファシズムか
ラスト20分我慢できずに2倍速で見てしまったことだけ詫びる。
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