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黒い雨のlagのレビュー・感想・評価

黒い雨(1989年製作の映画)
3.8
強烈な閃光と熱線に爆風。意識が戻り目を開けると瓦礫の山と火の海。おどろおどろしく湧き上がる雲。腕から垂れ下がった皮膚。酷く縮れた頭髪。変わり果てた全身火傷とぼろぼろの服で歩く。うつ伏せに倒れてくる。骨と皮の手足が空に向けて伸びる。踏み場もないほど黒焦げの死体。動かない人間が無数に浮かんで流れてくる川。

行く宛もないから一先ず妻と姪を連れて職場の工場へ。よう生きててくれたと労われる。知らずに街を歩き回った時の残留放射能。染み込んで身体を蝕む毒。エンジンの音が聞こえる度に戦車の下に爆弾を仕掛けようとする男。朝鮮戦争拡大と水爆開発のニュース。日記を清書して振り返る。成長する鯉。蝉や蛙の声。すすきが舞う。死亡届を受け取る人が居ない。亡者を導く力などない。
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