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黒い雨のTSのレビュー・感想・評価

黒い雨(1989年製作の映画)
3.5
【原爆投下数年後の恐怖】75点
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監督:今村昌平
製作国:日本
ジャンル:戦争
収録時間:123分
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ちょっとびっくりしたのが、今作の製作が1989年と比較的新しいということ。なるほど、わざとモノクロで撮り古めかしい演出をすることにより、よりリアリティを醸し出したというわけですか。音声もどことなく古く、1950年代あたりの映画と言われても全く気づかないでしょう。今作は広島に原爆が投下された直後と、その後の被爆者の生活を追った作品です。原爆投下直後の悲惨さはもちろんですが、それから数年経っても全く油断できないという恐ろしさも今作は描いています。

1945年8月6日の広島。閑間重松は出勤のためいつも通り家を出た。しかしその直後一瞬光り、瞬く間に周りは地獄絵図となるのだが。。

わけもわからないまま一瞬にして広島の町が廃墟と化す。わけもわからないま一瞬で焼け死んだ人が大勢いるということを考えたら末恐ろしい限りです。主人公たちはこの段階では生き延びることができ、地獄絵図と化した町をなんとか抜け出すのですが、ここからが怖い。黒い雨と呼ばれる放射性物質を含んだ雨が大量に降り注ぎ、人体を通っていきます。まさかこれがこの数年後に悩まされる恐怖の原因とは知らずに。。

中盤あたりはやや平和な描写が続きます。それでも戦争の後遺症が残る人間も少なくはなく、例えば車のエンジン音が聞こえるだけで我を失い、あたかも自分が戦場にいるのだと錯覚し攻撃態勢に入る人物など、戦争が人に与える影響は計り知れないと感じました。そしてじわじわと髪が抜けていったりと。。

今作はどちらかというと原爆投下後の恐ろしさを描いたものであり、巨視的であります。世界からも絶賛されている今作。恐らく原爆投下直後の恐ろしさを描いている『ひろしま』も近々見てみたいと感じました。やはり何年たってもこの出来事を忘れてはならないでしょう。
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