K助

タワーリング・インフェルノのK助のレビュー・感想・評価

4.8
パニック映画の金字塔にして、最高傑作。

ポール・ニューマンとスティーブ・マックイーンという二大スターが主演、脇を固める俳優も演技力確かな名優揃い。
二時間半という長尺だが、考え抜かれた展開と、豊かに描き上げられた人間ドラマが飽きさせない。今の作品にありがちな、キャラクターにまつわる余計なエピソードは一切なく、それでいて登場人物の人となりが明確に伝わる、練り上げられたシナリオも魅力。

サンフランシスコに建築された超高層ビルの落成式。しかしコストダウンの為に、電気配線に使われるケーブルを、設計士が指定したものではなく、建築基準適合レベルのものにグレードダウンしたのが運の尽き。スペックに比して過剰な電流が流れた事によりケーブルが発熱、火災が発生する。折しもそれは、記念パーティが開催されているフロアの下。逃げ場を失った招待客と、消火に訪れた消防隊の運命は…?

絶体絶命の緊急事態に直面した人間は、どのような行動を取るのか。
大丈夫だと信じたい正常性バイアス、他人を助けようとする献身的行為、弱者へのいたわり、他人を押しのけても逃げようとする生存本能、与えられた義務を果たす責任感、どんな時でも他人と自分を比較したがる優位感、酒に溺れる現実逃避、そして、迫り来る火災による破滅。
善人だろうが悪人だろうが、死ぬ時には死ぬ。社会的身分の高い人が、その地位に相応しい責任ある行動を取るとも限らない。作品世界の中ではあるが、冷徹なまでに描かれる現実。

今の映画にありがちな、押し付けがましく特定の感情を強いるようなところは一切ないにも関わらず、人間の行動に説得力と感動がある。登場人物が、ストーリーの為に矛盾に満ちた行動を取る事もなく、物語世界に没入出来る。

これが、役者の演技だ。
これこそが、物語を描き出すシナリオだ。

何度観ても色褪せない名作。

雑談:ポール・ニューマンの左手薬指にはまっている、悪趣味な巨大指輪が気になる…(笑)。
K助

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