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吸血髑髏船のMOCOのレビュー・感想・評価

吸血髑髏船(1968年製作の映画)
2.0
「お姉さん達の倖せを奪ったのはあなただったのね」


「きっこさん、この後岡田さんに服を破られ胸が露になるシーンです」(監督)
「そんな話聞いていないです!絶対に嫌です!」(きっこ)
「そんなこと言われても撮影が進まないじゃないですか、予告フィルムは『スリル アクション サスペンス ショック エロティシズム・・・』とうたっちゃっているんですから」(監督)
「きっこさん、僕が上手くサポートしますから大丈夫ですよ」(岡田)
「・・・」

「ちょっと待ってください、マネージャーに連絡しまーす」と携帯を取り出して・・・と、いう時代ではなかったためにどこで誰が仕組んだのか、その日マネージャーは同行しておらず、恐らくそんなやり取りの後、21才の松岡きっこさんは映画の本筋とは全く関係のないシーンで脱がされ・・・。昔から芸能界は「脱ぐことで芸域が広がる」とされている世界なので、誰かが暗躍したのでしょうね。


 予告編の『エロティシズム』という言葉の辻褄合わせのために全く無意味なヌードを強要した監督なのですが「そもそもタイトルの『吸血髑髏船』も『吸血髑髏』も出てこない、その辻褄合わせはどうしてくれるんじゃー」ときっこさんの代わりに叫んであげたくなってしまいました。吸血場面は少しもなく『吸血』タイトルに偽りありです。

 松岡きっこさんといえば、本人曰く『ボンドガール』なのです。『007は二度死ぬ』でボンドの乗る1人乗りヘリを海から眩しそうに見上げる三人の海女のいちばん右がきっこさん。「こんな役と思うでしょうけど、ちゃんとオーディションがあって・・・」と、独自のボンドガール理論を語っていたきっこさんのボンドガールデビュー『007は二度死ぬ』の翌年の映画が松竹の怪奇特撮映画第2弾『吸血髑髏船』、因みに第1弾は『吸血鬼ゴケミドロ』カラー作品ですが第2弾は敢えてなのかモノクロです。

 新婚の旦那さん役の西村晃さんと松岡きっこさんは実年齢で24も違うためにどうしても夫婦には見えず、親子の設定の方が良かった気がします。

 貨物船・竜王丸は乗組員のうらぎりで襲撃され、乗組員全員が鎖に繋がれ射殺されました。
 船医・西里(西村晃)は船長に頼み新妻・依子(松岡きっこ)を乗船させ新婚旅行も兼ねた勤務だったために夫婦共に殺害されてしまいます。

 襲撃犯のボスは犯行後海外に脱出。3年後、残りの襲撃犯の4人はそれぞれの人生をおくっていました。竜王丸は行方不明となり台風で沈没したと思われています。

 依子には双子の妹・冴子(松岡きっこ)がおり、姉の死で孤児となった冴子は教会の神父(岡田真澄)に引き取られているのですが、ある日、漂流する竜王丸を発見し、乗船して航海日誌を目にします。
 船内で姉依子の亡霊と遭遇した冴子は、姉に憑依され、次々と犯人達は・・・、射殺された西里夫妻は・・・というお話です。
 犯人を演じるのは金子信雄、小池朝雄、内田朝雄、山本紀彦の個性派俳優、顔に傷のあるボスを演じるのは・・・。

 海面に漂う霧、霧に飲み込まれていく貨物船・竜王丸のシーンは「映画『ザ・フォッグ』を相当研究したな」と思ったらこちらの映画の方が先でした。
 松竹の特撮もなかなかの出来だと思わせてくれます。

 
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