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國民の創生のペインのレビュー・感想・評価

國民の創生(1915年製作の映画)
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“映画史上最重要作”であり

映画評論家の町山智浩氏の生涯ワースト映画でもあることで知られる極めて賛否両論な悪名高き1作。

私も初めて観たときは絶句でした。
映画としての完成度は凄まじいけど、内容のそのあまりのエグさに…採点どころではない…と。

監督は“映画の父”であり、あのチャップリンからも惜しみ無い称賛を贈られているD・W・グリフィス。せめてこの人の名前だけは覚えこう。

じゃ~この映画の何が凄いのか?というと今現在、我々が観ている“映画”というものの概念、基礎、基盤(撮影方法だったり編集方法だったり)を築いた映画だから。我々が聞き馴染みのあるクローズアップとかカットバックとかカメラを左右にパンするだとかはこの映画が始まりだと言われています。

この映画以前にも“映画”たるものはあったけれど、どれも10分~20分程度の短編映像みたいなものにすぎなかったわけです。(※ちなみに世界最初の映画はリュミエール兄弟による1895年「工場の出口」)

本年公開の「ブラック・クランズマン」でも描かれていた、KKK(白人至上主義団体)が本作ではなんとヒーローの如く描かれる。“黒人は悪”と断罪し、殴り殺すあのKKKが…

今考えると「ブラック・クランズマン」は「國民の創生」を引用しながら(カットバックもそのまま使用)“逆「國民の創生」”をやろうとした志の高い1本であることがわかる。

こんな映画を作ってしまった監督もこの後のキャリアは苦難したみたいだが、こんな映画に出てしまった演者も大変だ…特に主演のリリアン・ギッシュに関しては尚のこと。彼女は本作に出た時22、3歳で、亡くなったのが99歳…どれだけこの映画の風評被害を受けながら女優人生を送ってきたことだろう。

この映画1本観るだけで映画の歴史、南北戦争、黒人奴隷解放、リンカーン暗殺、人種暴動… 19世紀後半のアメリカ国内の様子がよく分かる。良くも悪くもMust seeな1本なのは間違いない。

P.S.
昨今は同結婚が出来る国もあるなか、この時代は白人と黒人が結婚することすら許されていなかった…信じられん。
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