ジャイロ

國民の創生のジャイロのレビュー・感想・評価

國民の創生(1915年製作の映画)
3.5
KKKは英雄で、黒人は悪。白人こそ至上。ザ・バース・オブ・ア・ネイション。名前はかっこいいんだけどね。

そんな映画かと思っていた。

現代に通じる数々の映画技術の礎を築き、映画を芸術の域にまで高めた映画の父、D・W・グリフィス。彼が世に送り出した「アメリカ映画最初の長編作品」にして「アメリカ映画最大の恥」とまで言われた悪名高きこの作品。いつか観たいと思ってはいたものの、なかなか食指が動かなかった。かつてこれほどまで観賞に抵抗を感じた映画はあまり覚えがない。

リリアン・ギッシュもそうだけど、メエ・マーシュの目力もすごい。相変わらず二人とも華がある。

明らかに顔を黒く塗ったくった白人なんかもたくさん出てくるが、グリフィスの手にかかれば白人をアジア人に変えることもしばしばよくあることなので、気にしないことにする。

北部と南部の若者の友情や淡い恋、戦争の悲惨さを訴えた第一部。人が次々と死んでいく。どこかで観たことあるようなこの要人暗殺のシーン。ヒッチコック大先生の『暗殺者の家』でも似たようなシーンを観た。この不気味なリンカーンの暗殺が印象的だった。かなりのエキストラを動員したであろう南北戦争の戦闘シーンが圧巻だった。とにかくスケールがでかい。

第二部はどうしても作為的なものを感じてしまう。KKKを英雄として扱うのは、やはり、やり過ぎな気がする。

この映画の原作は「The Clansman: A Historical Romance of the Ku Klux Klan」原作者のトーマス・ディクソン・ジュニアは、父や叔父もKKK団員という折り紙つきの白人至上主義者。

D・W・グリフィスは、南北戦争で没落した南部の家で育ち、貧困の少年時代を過ごしたという。そんな彼の心の奥底に何が巣くっていたのか。彼を単にレイシストと非難することは簡単だが、その背景にある文化、思想、社会の成り立ちを考えると、やはり人種差別って根深い問題なのだと思う。

そしてさすがに150分は長いな。観た後にどっと疲れた。