なんだかスッとなじむ映画。まるで故郷に帰ったときのよう。もしくは長年愛用しているソファに座っているかのようとも言えるし、旅行先で部屋が和室だったときに感じるやつでもあるかな。すんなりと物語が入ってきます。
『ゆれる』('06) をきっかけに西川美和監督の他作品も気になるようになり、次に『すばらしき世界』('21)を観て監督のファンになりました。本作はその2つの作品の間に公開された作品です。Filmarksで繋がっている方に勧められたので観ました。
臨場感ある田舎の情景と実力派ぞろいの俳優たちの演技も素晴らしかったです。肩に力入っていない感じの普通さがいいですね。
山間にある小さな村の老人達に頼られる唯一のお医者さん(笑福亭鶴瓶)が失踪してしまったことで起こるサスペンス。地味なストーリーですが、昔と今の時間軸を行ったり来たりすることで謎が解き明かされていく構成に飽きることなかったです。ただ八千草薫が演じる未亡人と鶴瓶が一緒にプロ野球中継を観てるシーンのアドリブは、自然体風な演出を安易に狙っている感じがして好きではなかったかな。
作品の宣伝文句にある“この嘘は、罪か?”という是か非かの話というより、嘘をついてしまったことへの心の葛藤がテーマなんだろうな、と感じました。もしそうであるなら嘘をついてしまったことによる後ろめたさや閉塞感、手詰まり感はもっと欲しかったかな。
あと井川遥の透明感が素敵でした。