ダイヤモンド

八月の鯨のダイヤモンドのレビュー・感想・評価

八月の鯨(1987年製作の映画)
3.5
白は真理 赤は情熱。あなたの口ぐせ 情熱と真理があれば生きていける_。

これは、サラの亡夫の言葉。その通り、白鳥のように白くて美しい髪を持つ姉リビーは、
「パリといえば、シャンパンの香り」といった妹サラに対してすかさず、
「シャンパンといえば、頭痛」と答える。
皮肉屋である彼女らしい、誰に憚ることもなく“真理”ばかりを口にする。
一方、かつては栗色の髪をしていた妹サラは情緒豊かな老女。まだ少女だった頃に見た、八月になると浅瀬に鯨がやってくるのを未だに信じて、待ち望む。

サラは視力を失った姉の面倒を甲斐甲斐しくみる。
しかし、世話する方とされる方、気づかないうちに生じるひび。小さなひび。もう長くない余生だからこそ、修復する機会が訪れる前に、決定的な別れを迎えてしまうかもしれないひび。
でもほんの少しの歩み寄りが、姉妹の仲を元の通りにした。

ただそれだけの話。なのに胸が熱くなる、目頭が潤む。稀にそういう映画ってありませんか?
これはその一本。

主演のお二人。リリアン・ギッシュおばあちゃんと、ベティ・デイヴィスお祖母さんがあの海辺の一軒家で日々を送るシーンは、老境に至った者たちにとっての理想郷でもあり、かつこれから黄昏時に向かおうとする人たちの憧れの晩年かもしれません。

(岩波ホールが今年七月に閉館するというニュースに触れて、観ました)