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わらの犬のarchのレビュー・感想・評価

わらの犬(1971年製作の映画)
4.0
サム・ペキンパーは暴力についての映画を撮る人間だ。その中でも本作ほど人間の内なる精神的な暴力性を恐ろしく描いた映画は中々ない。
これまでは西部劇や戦争といった暴力が日常の世界で物語は描かれていた。
しかし本作は暴力とはかけ離れた英国の田舎に、暴力とは無縁の数学者の男とその妻が物語の中心となる。
無駄に暴力を誘発される挑発的な魅力を醸し出すスーザン・ジョージと暴力を終盤に至るまで選択肢とせず、事を荒立てようとしないダスティン・ホフマン。
その暴力とは無縁の状態から一気に暴力の領域へのなだれ込んでいく。静かに堕ちていく男にはもう帰り道は分からない。

これまでの作品と比べるとはやはりグロや流血表現は抑え目。しかしこれまでの作品と比べてもレイプシーンは屈指の暴力表現だと思う。
あそこがこの作品の最高点だと思う。
カタルシスは抑え目、あるのは理性ある人間性の脆弱さ。
人は堕ちていく。軽く押しただけで。
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