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わらの犬のOのレビュー・感想・評価

わらの犬(1971年製作の映画)
3.7
『男を狂わせるのはいつだって女』

メンヘラかまってちゃんな幼妻を
持つ、草食系インテリ数学者の主人公。
田舎の余所者に対する視線は、
監視をするような、品定めを
するような気味の悪さを感じます。
集団で束になって弱者をいたぶる
構造は陰湿ないじめそのもの。

旦那にかまってもらえないから
といって、明らかに自分を
性的な目で見てくる男たちに
対して、出来心でセクシーな
誘惑をして見せる妻は、まさに
若さと美しさを持て余した
頭の悪い女の典型といった感じ。
2人の関係は夫婦というより親子です。

レイプのシーンも正直全く同情
出来ませんでした。だってあれ、
普通に浮気ですよね( 笑 )
寂しいから元彼と...って。
アメリカにいた時は頭(収入)の
良い男を選び、田舎に帰った途端
頭は悪いが腕っ節の強い力のある
男に惹かれる妻エイミーという
構造が実に面白い。
彼女が旦那にイライラするのは
かまってほしいからだけでなく、
旦那がバカにされている事を
自分の事のように恥じている
のだと思います。

旦那に思いやりや気遣いが欠けて
いるのは確かですが、エイミーといい
ジャニスといい、ロクな女がいません。
「本気で言ってるのか」と言った
妻への軽蔑したような冷めた表情に、
「絶対に暴力は許さない」
と言った主人公が暴力に走る瞬間の
タガが外れた表情、どれを取っても
秀逸です。

大人しそうに見えて、
妻を子供扱いすることで
静かに、でも着実にその思考
と自由を奪い、支配する夫と
それに依存し、他に満たされない
モノを求めるほど欲望に飢えた稚拙な
妻と、どちらが罪なんだろう。

死体の山を前に震える妻を
「大丈夫か?」の一言で置き去りに
する主人公と、黙って頷き、座り込む
事しかできないこの夫婦の関係は、
初めからひとりぼっち同士のままごと
に過ぎなかったのかもしれません。

本気で殺り合う男たちの、
鬼気迫る表情が実にクレイジーで、
俳優陣の気迫に思わず身震い。
これぞアメリカン・ニュー・シネマ。
アメリカから見たイギリス、
というだいぶ偏った社会的背景や
時代背景が色濃く反映された
作品だと思います。
やっぱりベトナム戦争前後の
ハリウッド映画は面白いです。
「ここは俺の家だ。俺そのものだ。
誰も入らせない。」
だなんて、完全にアメリカという
国を指していますよね。