最高の医療ドラマ。
休憩を挟んで2部仕立てのようになっている。1部では主に死にゆく者を看取る中で人間の尊厳を自覚した保本が小石川療養所での活動理念に心から共感し、当初は反発していた赤ひげと協力していく様子が描かれ、2部ではまだ希望のある少女や少年を救うと同時に自分自身を整理し、進むべき道を踏み出していく様子が描かれる。
全編通じて描かれるのは、「心に傷を負った人間」と、「そんな彼ら同士の優しさ」である。やはり、傷ついた人間こそが他人の痛みに理解を示し、救済に導くことができるものだと本作は教えてくれる。その描写が琴線に触れ、少年少女の触れ合いには少し泣いてしまった。
ただシリアスなだけではなくコミカルな部分もあり、また役者たちの演技が素晴らしい。黒澤明が真正面からヒューマニズムに向き合った、まごうことなき名作。