つのつの

赤ひげのつのつののレビュー・感想・評価

赤ひげ(1965年製作の映画)
3.9
長いは長いけど面白い。
多分ドラマ化するのが一番かとは少し思う。短編集的な作りと言える。

赤ひげと呼ばれる医者が長である小石川診療所に配属された保本登は、エリート医者ではあるが若さゆえの無知により赤ひげのやり方に反発する。
しかし、そんな彼が様々なこの世の不条理とそれに対して医者ができることのちっぽけさ、ひいては自分の未熟さを自覚して、成長していく物語。

流石黒沢というべきか一つ一つのシーンの作り込みが尋常ではない。
凄まじい陰影のついたライティング(白黒映画なら余計難しいと思う)
常に画面上に厳然とあり続ける自然現象。
佐八が始めておなかと出会うシーンの降雪の美しさは忘れ難い。

後半は、保本と彼の初めての患者であり幼い身なのに娼婦として働かされているおとよとの交流に焦点が絞られるが、これがまた泣ける。
幼い頃から過酷な人生を歩み続けてきたおかげで、完全に世を恨み猜疑心の固まりのような眼をしていた彼女が次第に保本や診療所の人々に心を開いていく、そして遂には大切な人を見つけていく過程が丁寧に描かれる。
それまで、救いのないような悲恋や狂気が展開されていたからこそ、このエピソードに示される希望がより美しく見える。
そして、この残酷な現実を耐え続けているおとよのような人を救い希望を与えるということに、医者という職業が持つギリギリの意義を感じる。

アウトローのトムクルーズばりに、敵の骨を折りまくる赤ひげのバイオレンスもグー!
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