黒澤明と三船敏郎のコンビ最終作。
黒澤明にとって映画というのは手段ではなく、目的なのだろう。
映画を撮りたい、という気持ちはどの作品にも溢れていて。何をどうしたって映画を撮りたいという気持ちにさせるものが、人間への好奇心であったり、黒澤明なりの正義感だったり、三船敏郎という俳優への想いだったりするのだろうと思う。
本作は185分という長尺で、長い。長い割に、その長さにはっきりと必然性があったと言い切れないところがある。
2時間であれ、2時間半であれ、まとめることはできると思う。
単純にその方が見やすい。
何よりタチが悪いのは、大きく、このシーンが良い、みたいなところもない作品である。
三船がゴロツキたちの骨を折りまくる、なんていうか奇異なアクションシーンもあるにはあるが、映画を牽引するような大胆で躍動感のあるシーンはほとんどない。
エピソードの順番も適切と言えば適切だが、比較的、普通と言える。
展開としてはやはり地味と言える。
しかし、じゃあ「面白くない」と一言で言えるわけでないのが厄介なところ。
ここまでの3作。「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」というエンターテイメント作品群がある中で本作は185分の大作でありながら、物凄く地味だ。
敢えて185分という長さに、とにかく丹念に地味になってもシナリオに描き込めるだけの人間観とか三船敏郎とか、そういうのを集大成的に画面に反映させようとしたのではないかと思う。
あくせくしないでゆっくりとじっくりと、映画という優しい人間の時間を味わえ!
ということなのだと思う。
この姿勢は特に近年の大林宣彦作品に影響を与えている気がする。
僕には長くてとても眠かったが。
それでも黒澤明が人間を描く、ということに挑みまくった痕跡と、それをとにかく正座させて観せようという心意気にやられた。