海老

トイ・ストーリーの海老のレビュー・感想・評価

トイ・ストーリー(1995年製作の映画)
4.6
キリのいい数字に特に意味はないのですが、せっかく100マーク目なので、思い出の作品にしておこうかなと。

何を今更、な作品ではあるのですが、核心部分を含みますので未見の方は避けてください。

確か、子供だけで初めて映画館に行った時に観たのが、この作品でした。これがピクサーとの出会いになったわけですが、ピクサー初の長編アニメを思いがけずチョイスしていたことに、勝手に感慨深いものを感じております。当時の自分に「イイね!」って言っておきましょう。
まぁ当時の僕は制作と配給の区別も付いていなくて、卓上ライトが飛び跳ねるこれは何なの?とか思っていたものです。


さておき。
それはそれは、度肝を抜かれました。

当時「CG」って言ったら、どんな印象だったんだろう。ゲームで使われる段ボール箱みたいなカクカクキャラ、とかいう印象だったかもしれません。

この生命感と躍動感に溢れるキャラたちは何なんだ?何が起こっている?と終始驚きっぱなしで、もはや唖然。この当時はアニメといったらジブリみたいなところがあったので、CGで長編アニメという考え自体がなかったんです。今でこそCGアニメの名作は沢山ありますけど、そんなものを観たことのなかった当時の衝撃といったら!

勿論、現代からしたら荒いCGです。リアルタイム世代でない方々は、逆に、たかが20年で「リメンバーミー」ほどに進化した事に驚くのも一興かもしれない。世界初の長編CGアニメとして観ると尚更味わい深いです。

…と、そんなハンデを抜きにしても、控えめにいって傑作だったと思います。

言わずと知れた、オモチャたちが主役のストーリー。その発想と作り込みがとにかく素晴らしすぎた。
オモチャの視点に立ち、小さな舞台をクローズアップして壮大に描かれている世界観がたまらない。初CG作品という肩書きに関係なく、鋭いアイディアに溢れていた事も、未だに語り継がれる理由なんでしょう。プレゼント(オモチャにしたら新入り)を探りに行くシーンのスペクタクル感も最高ですし、オモチャの集会とかの細かい小ネタも随所で効いていてワクワクが尽きない。
総じて、ごく近所で繰り広げられている狭い世界なんですが、物凄くハラハラするアドベンチャーになっているのは、見せ方がうまいからなんでしょうね。人間にバレちゃいけない緊張感だったり、オモチャだけでは無力すぎる状況だったり。クライマックスの、個々の個性を活かした逆転大作戦はことに爽快でした。

僕は吹き替えで観たのですが、主役の二人に唐沢寿明さんと所ジョージさんを抜擢したセンスも感心します。当時まだそこまで多くの映画を観てなかったということもあるんですが、吹き替えのクオリティがここまで高い作品というのも知らなかったんです。

何よりも、自分を本物のスペースレンジャーだと信じて疑わないバズが、オモチャとして目覚めていく物語と、オモチャであることに誇りを持つウッディとの間に芽生える友情劇は、いつまでも褪せないものに思います。
自分が量産されている存在だと知った時のバズの絶望は想像に難くない。
だからこそ、ラストの脱出劇で「飛んでない。落ちてるだけだ。かっこつけてな。」と、物語冒頭でバズを罵ったウッディの言葉をそのまま反復したのが凄く格好良かった。オモチャであることを受け入れ、ウッディと真の仲間になった瞬間のようで身震いしたものです。

たった一つ、欲張りなことを言いたい。その翌年の誕生日、プレゼントの時期に例年通り一喜一憂するオモチャたち。ウッディの最後の言葉は、バズに向かって「どんなオモチャでもアンタには敵わないさ」でした。そこは「俺たちには敵わない」って言って欲しかったなー。細かいなー^^;

こんな細かいことも言いたくなるほどに、完成された映画史に残る名作。

初めて観た時の感動や、冒頭で述べた背景などもあり、僕にとっては特別な作品です。今では僕も妻子持ち。勿論、娘にも見せています。何故なら彼女もまた特別な存在だからです。
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