菩薩

シナのルーレットの菩薩のレビュー・感想・評価

シナのルーレット(1976年製作の映画)
4.2
この狂宴の仕掛け人が誰かと言えば足の不自由な娘なのかもしれないが、彼女に様々な入れ知恵をしたのはおそらく耳の不自由な(これも定かでは無い)家庭教師なのであり、そんな彼女に狂気の銃口が向くのは致し方無いのかもしれない。共犯・支配・被害の関係性は目まぐるしく変わり、綱渡りの様なアンバランスさでギリギリの均衡を保ち続け、場面ごとにこの「城」の最高権力者は移り変わっていく。誰もが加害者であると同時に被害者でもあり続け、誰かに対しての義理を守りつつ誰かに対しての不義理を働き続ける。人間でありながらもある種の人形としてその空間に幽閉される者達、血の雨降って固まる関係性は欺瞞の元凶たる婚姻関係に落ち着くが、この時点でもルーレットは回転し続けており、最後にどのマスに玉(弾)が転がり込んだかは目撃者自身が推測しなければいけない。誰が勝利者であり敗北者であったかは、当の本人達にさえきっと理解出来ぬまま、この地獄は幕を下ろす。

『ペトラ〜』と『不安は〜』との抱き合わせBOXにての鑑賞であったが、丁度お互いのエグみの部分を抽出して凝り固めた様な苛烈さ。ルノワール『ゲームの規則』→本作→濱口竜介『PASSION』なんかの流れで観たら余計に面白いのかもしれない。
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