ともたろう

新・平家物語のともたろうのレビュー・感想・評価

新・平家物語(1955年製作の映画)
4.5
「祇園精舎の鐘の聲、諸行無常の響あり」の冒頭文で知られる平家物語を吉川英治が小説にしたものを原作に、溝口監督が映像化。
見どころはオープニングが終わるといきなりやってくる。
京の町を俯瞰していたカメラがだんだん下降していき、人々の会話を拾いながら忠盛と清盛親子の凱旋行列に突き当たる一連の流れが圧巻。
この映像がヌーベルバーグの監督たちに衝撃を与えた逸話もよく引き合いに出されることで有名。

長大な原作の為、三部作が予定されたが、現在観ることができるのは溝口監督の第一部のみ。
そういったこともあって、内容はやや地味だ。清盛は初陣を済ませたばかりの若者で、まだ何者でもない。出生の秘密に動揺し、両親に詰め寄り、町へ繰り出す。そんな悩める若者がやがて頭領の自覚を持つまでの成長を描く。
このジャケットの写真は対立する比叡山へ乗り込む場面。
埃っぽい京の町と、比叡山の建物や軍装の色彩、その中で矢を放つ清盛の鮮やかさは印象に残る。

余談として母親役の胸を強調する衣装も特徴的。時代考証にこだわった溝口監督らしからぬ演出に大人の事情が垣間見える。
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