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愛しのローズマリーのKYのレビュー・感想・評価

愛しのローズマリー(2001年製作の映画)
3.9
ファレリー兄弟監督作。

ひたすら外見の美しい女性ばかりを追いかけていたハルはある日催眠術をかけられ、内面の美しい女性が美しく見えるようになる。そのすぐ後、ハルは街で見かけたローズマリーに一目ぼれするが、実は彼女は体重100キロを超える巨体だった。

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面白かった。外見よりも中身が大切とかそういう話じゃなくて良かった。案外奥が深い。着地点が見る側の視点として最も気になる要素になるけど、個人的には納得。

クライマックスで『外見か中身か』の二項対立を放棄し【相手の外見でも中身でもなく、相手の気持ちを見る事が大切】という方向に振れるのが良かった。

ローズマリーを【美女とデブ】二つの視点で重ねて見させる事で、観客に揺さぶりをかける作りも面白かった。自分も結構見ながら考えさせられた。

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今作を否定的に見ている意見って、『外見よりも内面が大事と言うメッセージだけどブスを笑い者にしている』と言うものと、逆に『自己管理能力のないデブを中身の美しい女性と捉えるのはおかしい』という言うパターンが多い。

この、よく考えて見れば真反対の視点から否定的意見が来てるってこと自体が興味深いんだけど、共通しているのが今作を【偽善】だと捉えているということだ。

でも本当に今作は【偽善】なんだろうか。

美女と付き合いたい理由って大きく2つあげれば『他人に自慢できる』『自分自身の目の保養になる』の2点になるけど、今作はそれを2段階でクリアする作りになっている。自分はそこに誠実さを感じた。

主人公は催眠術が解けた直後は、人からどう見られてても良いから催眠術にまたかけてくれと他人からの視線を気にしなくなりながらも自己満足は満たそうとするが、

最終的に主人公は、自分自身の目の保養という視点自体よりも『ローズマリーに幸せにする』という他者への思いやりを第一優先で考えるようになっている。

結果、最終的に『人は外見ではない』というものではなくて、ましてや『中身が大事』というものでもなくて、【相手の気持ちを考える事の大切さ】を浮かび上がらせる。

その意味で『ローズマリーの中身が美しく描けていない』という意見も的外れに思う。中身とかどうでもよくて、主人公はとにかくローズマリーという一人の女性を幸せにしたいと思ったのだ。

人が幸せにしたい特別に思いやりたい人なんて人それぞれだし、そこに明確な理由などない。

あと、案外重要なのが冒頭の父親の遺言シーン。このシーンがある事で今作自体が『容姿で人を判断するのは刷り込みのせい』という後天的なものだと描いてる点だ。コメディだからといってそこを見逃さないのは良かった。

個人的に嬉しかったのはデビュー間もないフランスのバンドPHOENIXのデビューアルバムから【Too young】を使っていたこと。流石の選曲センス。
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