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コード・アンノウンのHKのレビュー・感想・評価

コード・アンノウン(2000年製作の映画)
3.5
『セブンスコンチネント』『71フラグメンツ』などのミヒャエルハネケ監督によるテレビ映画。キャストはジュリエット・ビノジュ、ディエリー・ヌーヴィック、ヨーゼフ・ビアビヒラーなどなど

聴覚障害の子供による手話の表現が伝わらない所から始まる。農業を営む物静かな父親から逃れるために都会に逃げた一人の青年が持っていた食い物を道行にいる物乞い女に捨てた。この様子を目にしたアフリカ系フランス人の男が失礼だと説教して警察沙汰に…

この映画もまた人々のディスコミュニケーションから生じてしまうちょっとした摩擦によるトラブルというのを描いているのだが、個人的には前作の71フラグメンツよりも品の良さが消えてしまっているように感じる。

序盤に手話が伝わらない子供たちを正面から撮るカットなどを入れることによって、ハネケが伝えようとしたいディスコミュニケーションの様子をより分かりやすい表現で描こうとしている意図が感じられる。でも、分かりやすく描くというのが必ずしも正しいとは思いませんね。

今作は前作に比べて残酷描写があまり少なく、どちらかと言えばそこまででかいショッキングな出来事があるわけではないものの、群像劇という点ではより彼らの日常生活にコミットしているような気がする。

しかし、ハネケさんがあまり好まない説明。言うなれば説明は映画を矮小化するといいますが、この映画だとちょっとばかり彼らの生活の様相をより社会的にわかりやすいように明瞭にしている分、ちょっと矮小化しちゃってるんじゃないの?と思ったりしちゃいましたね。

しかし、あまりにも明確な説明というのはあまりなく、そのために見終わった後の妙な不可解な点というのが不安感を仰ぐ。特に映画の序盤でジュリエット・ビノジュがどこかに拉致されたかのような映像を残すのですが、あれが時系列的にどの位置の場面なのか?そこまで明確に描かれていませんがあれは映画内映画での出来事かそれとも本当に映画内で拉致られたのか分からない、提示しないのは良かったかな~とは思いますよ。

終盤のドラムロールからの流れるようなエンディングは良かったような気がしますが、やはり71フラグメンツと同じく敢えて雑なショットの間延び感を出している。それでも盛り上がりましたけどね。やはりああやって妙に長いショットを見せらられると考えさせられますね。

ハネケはこうなんだろう、やろうとしていることは多分世の中には社会的な背景の結果、それらのせいで分断されてしまった人々がたまたま一つの場所で接触した結果起こってしまう最悪の状況が、ある種のディスコミュニケーションゆえの弊害と説きたいのでしょうね。

同種のテーマだと個人的には山田尚子さんの『聲の形』とかの方がより明確に、あまり社会的問題などをごちゃまぜにすることなくより人間に焦点を当ててもっと上手に描けているような気がしますよ。あくまで個人的な感想なんですけど。

もうちょっと違うコミュニティに所属しているゆえに陥ってしまう鬱屈としたものとか、そこからの衝突というのを描ければもうちょっと評価高かったかもしれませんね。

いずれにしても見れて良かったと思います。ハネケ作品にしてはあまり人が死なないために、普通の人には見やすいかもしれませんね。
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