ホラ話。ずっとずっと聞かされていた。それを結婚式の日にまでしなくたっていいのに。父とケンカをして、それから口も聞いていない。
「ビッグ・フィッシュ」それが父の話だ。
父がみた世界が嘘だって誰が決めるの？体は衰弱し、少しずつ死に近づくゆく父はお話が好きだった。現実と空想の間を行ったり来たりしながら物語は進んでゆく。
運命の人と会った時、本当に時が止まる。サンドラを見つけた時、僕の運命は決まった。婚約者がいることを知ったけど、戦うことにしたんだ。大学の講義で、とても晴れた大空で、水仙で埋め尽くされた場所で、僕は君を好きだと伝える。
父が、僕の妻にお話をしていた。要点だけの話なんてつまらないだろ。ずっとずっと本当の話を聞きたかったのに、父の最後の瞬間に死に方の話を聞きたいと言われた僕は思わず父に、父が川で魚になって川に戻っていく話をした。父は満足そうにして息を止めた。ビッグフィッシュはずっと語られながら、父はみんなの中で生きていく。
