螢

ビッグ・フィッシュの螢のレビュー・感想・評価

ビッグ・フィッシュ(2003年製作の映画)
3.8
人生において、辛いことを乗り切り、楽しみ、最期には豊かだったと振りかえるためには、再構築する空想力も重要な要素なのかもしれない。
ティム・バートン監督の持ち味ともいえるカラフルポップで超現実のファンタジーな世界に、人の生死や父子の確執という現実社会の主題と世界が巧みに融合していて、とても新鮮な作品でした。

エドワードは、とにかく自分の人生をお伽話的に語りまくるホラ吹き男。
息子が生まれる日に、願掛けで結婚指輪を餌に池の主を釣り上げただの。
子どもの頃に森の魔女に出会って自分の死に方を見せられただの。
村に居ついた巨人を大胆不敵に説得して二人で都会に出てきただの。

今も昔も、場所も相手も弁えずに面白おかしくあり得ない話を繰り返しするので、祖国アメリカを離れてフランスにてジャーナリストをしている息子のウィルはうんざりし、父とは距離を置いていた。
まもなく父になる予定のウィル夫妻の日々は穏やかに過ぎていた。けれど、父が危篤状態になったと連絡が入る。
帰国したウィルは、父の人生の真実を知るため、父の物語のモデルとなったとおぼしき土地を訪れるのだけど、そこで待っていたのは…。

物語は、エドワードが語る賑やかで底抜けに明るく滑稽な童話的過去と、彼の死を目前にした物憂い現在とが、交互に描かれ、進んでいきます。
過去シーンは、これぞティム・バートンというべきカラフルさとファンタジックさ。
そこに挟まれる色彩の少ない現在のシーンは絶妙な対比となり、人生の瑞々しさを感じさせるとともに、作品にメリハリを与えています。

父の人生の真実を垣間見、物語るようになったその心うちに想いを馳せることになったウィルが、父の最後の物語に手を貸すシーンは胸に染みます。
そして、多くの人を助け、愛された父の人生を象徴するかのようなあのラストシーン。

悲しくしんみりもするけど、温かい気持ちにもなれる、観てよかったと思えた作品です。
螢