イチロヲ

エンター・ザ・ボイドのイチロヲのレビュー・感想・評価

エンター・ザ・ボイド(2009年製作の映画)
3.5
東京でドラッグの密売人をしている青年が、警官によって射殺された瞬間から、幽体離脱を体験していく。チベット密教の死生観を下敷きにしている、ヒューマン・ドラマ。

主人公の「魂」が観ている世界を一人称(または三人称)で描いていくスタイル。今現在の出来事を俯瞰で眺めたり、過去の出来事をフラッシュバックで再体験したり、幽体目線を演出するための映像技法が、ふんだんに使用されている。

舞台を東京の猥雑な一画にしたのは大正解。あらゆる文化が玉石混交している、東京そのものにアシッド感があることを再発見することができる。外国人から奇異な目で見られている「和式便器」の上で主人公が絶命するところも面白い。

「死後に精神はどうなるのか?」という普遍的命題について、監督なりの答えを出そうとしているドラマ。サイケデリック体験を促してくる映像世界に魅力が詰まっているが、他人のセックスを見ながら転生するのって、どーなのよ。
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