広川なつき

エッセンシャル・キリングの広川なつきのレビュー・感想・評価

エッセンシャル・キリング(2010年製作の映画)
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すごく好きな映画だったし、ストーリー展開ではなく熱量だけでやられた、と思った(スコリモフスキ監督なので脚本も普通に上手いけど)

オープニング、背景の物語を説明しなくても、そこに何か渦巻く感情や危機感に巻き込まれて、状況の変化に目が離せなくなる。たとえば、ゲームを遊んでいて、ストーリーは理解できなくても最低限ゲームオーバーになるわけにはいかないという感覚に近い。ひたすら主人公に感情移入してしまう。
意外に目まぐるしく状況が変わっていって引き込まれる。

そしてオープニングが終わってからの本編であるかのように始まる主人公の旅。
厳しい自然の中でのサバイバルだけど、自然の驚異や壮大さを見せるのではなく、ひたすら人間を描いていくところがこの映画に合っていると思った。
自然の風景を映す映像そのものは美しくて目を引かれるけど、常に物語としての視点が主人公に近く、鼓動が感じられるほどで、それが熱量として感じられる映画。

ラストシーンはオープニングの目まぐるしさを否定するかのように冷たく静かなのが印象的だけど、それでも熱は消えていないような気がした。
広川なつき

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