ミシンそば

木洩れ日の家でのミシンそばのレビュー・感想・評価

木洩れ日の家で(2007年製作の映画)
4.0
大きな声では言えないけれど、この微妙に合っていないようで合っていると感じる邦題の正式名称は「木洩れ日の家で死ねたなら」だろう。
最後まで観て自分はそういう答えに至った。

91歳、郊外の森の寂れた一軒家で、愛犬(めっちゃいい演技する)を話し相手に一人で暮らす、息子夫婦とも折り合いの悪い偏屈な老婆が、目前に迫っている自覚がある「死」を明確に認識し、過去を回想、未来へ何を残すかを思い悩む……まぁ、難しい言葉で語ればそうだけど、本質はゆっくりと贅沢な歩調で流れる老婆アニェラの日々を淡々と描く、世界の狭い物語でもある(人生を畳もうとしているのだ、狭くて当然)。

「いつもと変わらない」を努めて実行しようとする時に現れる綻びと、知らぬままでいたかった事実。
息子と太った孫娘が殊更嫌な奴に見えてくるのは、アニェラの物語でそれ以上広がらないのだから当然。
使い古されているラストの展開も、生ける伝説とまで言われた主演俳優のシャフラルスカだからこそ成立する部分こそ大きいが、そこら辺に日本公開時に随分ロングランしたって逸話の説得力がある。
何となく、日本人が好きそうだな…ってお話でした(自分も結構好き)。