Yuuki

セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転身のYuukiのレビュー・感想・評価

4.0
銀行家アーサーは駅で見知らぬ人に尾行されて住所の書かれた手紙をいきなり渡された。何?さらに死んだはずの親友チャーリーから電話を受けて「住所のとこ来て」と言われる。何や?導かれるままに待ち受けていたのは、全く別人として生まれ変わらせてくれるサービス会社だった。何不自由ないが空っぽだった人生を振り返った結果、アーサーはそのサービスを受けるのだが…な話

おじさんが別人に生まれ変わって全く違う場所で違う人生を生きようとするが…という1966年の不気味なSFホラー映画。一言で言うと、「全盛期の世にも奇妙な物語」という感じ。つまり良い、ということ。シナリオ自体は当時にしてはかなり先進的で、今でもまあ十分鑑賞に耐えうる少し不思議で奇妙なSFストーリーって感じなんだけど、本作を今でも語り継がれるカルト映画たらしめている要因の一つは、普遍的なシナリオをより一層忘れられないものにする「オープニングクレジットからアーサーが手紙を受けとるまでのシークエンス」のヤバさ。あらゆる衝撃が押し寄せて来るんですよね…

オープニング、不審にさせられるBGMに人体のパーツの超ドアップ+歪みに歪む特殊映像でまずただの映画じゃないことが心で理解できます。何あれ怖い…。文字じゃとても伝えられない。そして序盤のカメラワークがもう変態としか言いようがない奇抜さ!アーサーの肩越しにガッチリ固定したTPSゲームみたいな視点で歩いたり、尾行するおじさんは鼻から上のドアップで映す(何故!?)!かと思いきや犬にカメラを背負わせたのかってぐらい低い位置からも!とにかく不気味!不穏!

そんなやばいカメラワークからいきなりおじさんがおじさんに紙切れを渡すという謎過ぎる流れで、もう言い知れぬ不安に押し寄せる!何も分からない!何なんだ!でもこうなったらもう監督の勝ちですよね。そのままこの奇妙な世界に導かれ、アーサー改めてトニーとなった男の数奇な人生を垣間見る…。当時にしてみたらかなりトガったクオリティだろうな〜って感じでした。こういう映画は現代技術と比較してケチをつけるのではなく、公開当時どういうインパクトを残したかというところに思いを馳せるに限る。興味あればぜひ。敬具
Yuuki

Yuuki