アラサーちゃん

永遠の語らいのアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

永遠の語らい(2003年製作の映画)
3.5
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〖永遠の語らい〗
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〖アンジェリカの微笑み〗や〖ブロンド少女は過激に美しく〗のマノエル・ド・オリヴェイラ。この時すでに95歳というご高齢ながら、なんとも爆発的にすごいもの作ってらっしゃる。

パイロットの夫とボンベイで落ち合うため、歴史学者のローザは娘のジョアナと世界各国をまわる船旅に出る。
行く先々の遺跡や建築物、博物館での歴史ある品々に触れ、彼女はまだ幼い娘に歴史とはなんたるか、文明とはなんぞやを説いていく。

さて、ここまでは映画版・世界ふれあい街歩き。

この映画の前半は歴史や宗教をかじった人には楽しいですが、ほぼ退屈です。
もっとも、これは単なる導入でしかならず(ほぼ3分の2の1時間ほどそれですけど)後半、彼女たちが船内の食堂でとあるテーブルを眺めるところからがほんとうのストーリー。カトリーヌ・ドヌーヴ様とジョン・マルコヴィッチ軍曹のご登場。

ここで、三人の女性とひとりの男性(船長)がテーブルを囲んで話しているんだけども、全員の国籍が違い、言語も違う。しかし、だれかのジョークに笑い、だれかの演説に頷き、だれかの揚げ足を取ってジョークをまたかます。
そして招待されたローザ、娘のジョアナにアメリカ人船長が人形をプレゼントするのだが、『見せて』と三人の女性たちの手に渡る人形を『とらないで』とジョアナは声を上げ、アメリカ人は『だれもとらないよ』と優しく諭す。

そう、これは言わずもがな世界の縮図であり、待ち受けるまさかの衝撃ラストへの布石にほかならない。

この映画は、オリヴェイラが911に感化されて手がけた作品です。

どこかとんちんかんな、的はずれな、何かが歪んでいるようなやりとり。幾何学模様を思わせる、規則的でありながらカオスな会話や風景が広がっている。
そんなオリヴェイラ節が効いていて、尚且つ、コスモポリタン、文明文化が進化することの無秩序なんかの皮肉をびしびしと感じさせてくれる。

それをバッチリ締めてくれるあのラストは、サスガ決まっていた。

正直観始めて前半は、フィルマークスで4.0評価嘘だろ…って思ったんですけど、全然そんなことなかったよ✩⡱
個人的にはアタリ。でもこの独特のオリヴェイラ節は合う人合わない人いるだろうなと思う。

可もなく不可もなくの並盛映画に観飽きた人にはおすすめ、のんびりだらり眠気を誘うくせにピリッと辛い、久々に新しい出会いの良作でした◎