Jeffrey

国境の町のJeffreyのレビュー・感想・評価

国境の町(1933年製作の映画)
4.0
‪「国境の町」‬

冒頭、帝政ロシアの片田舎。
第一次世界大戦、ロシア革命の波、資本家、軍靴の製造、前線、捕虜、ドイツ軍の兵士。汽笛の音、合図。今、ドイツを敵視する父親と2人で暮らしている純粋で心の優しいロシア娘との許されざる愛の物語が始まる…

本作はボリス・バルネットが「雪どけ」の次に監督したエレーナ・クジミナ主演による喜劇ドラマで、次回作の「青い青い海」でもヒロイン役に彼女を抜擢していた。

この映画冒頭から引き込まれる。
まずオープニングのベーラヤトロイツァ(教会)が水面に反射して真っ逆さまに表現される。

映画を見終わると微かに宗教体制を反対するような演出なんだろうと感じるが、所々に聳え立つ教会がバックに写し出されると、そんなことも無い様に感じてしまう、その部分はよくわからないが物語としては重いテーマにコミカルな演出もあって可愛らしい。

特にアヒルや子犬が登場する場面は誰が見ても印象に残る。

1番ウケたのは冒頭の馬が喋る場面だ。
この点はソ連文化なのか、凡ゆる文学にも言葉を発する馬が現れるのは珍しく無い。

本作にはウーリッツァーオルガンの音が使われており、更に言うと民謡チュバリキやドイツ軍の軍歌や賛美歌までも使用され、フランス革命時の革命歌で現フランス国家でもある曲までもが使用されているのには驚かされる。

この監督の作品には様々な音楽が使われており、中でも塹壕の中で兵士たちが歌う"兵士の歌"は印象的だ。

音楽とともに本作のサウンドには様々な特徴と想像力に富んだ音作りがある。

静寂の中にミシン、ブーツの音、その他の環境音が音として仕掛けられる。それはフレーム内とフレーム外に分けられ、観客はその音で次の物語への展開を確認する。

ストライキとデモのような激しい場面もある中、小さな街での夜を映し出した風景が心の底から好きで、ギターの音色が奏でる中、家族の団欒を窓際から映すショットや家の明かりが外に漏れた温かみのある演出はとても好きだ。

今では中々撮影されない田舎町の古き良き遭遇だと感じたし、胸が締め付けられる様な切なさを超えた深い感動は正に叙情性がある。

このような似たような作品でまだ未見の映画が沢山ある、それは「チャパーエフ」「黄金の山」「マクシムの青春」等だ。

あの悪劣な塹壕の中の若い兵士たちの生きるか死ぬかの表情と煙や厭世的な気分にさせる表現や演出はすごい。モノクロの分、資料映像を見ているかの様で正直かなり精神的にきつい…。

敵国であるドイツ人だからと言って同じ靴職人をみんな集ってボコボコにするシーンでヒロインの女性が号泣したりする場面はなんとも悲しいし、ロシア人の男性が途中、止めに入って、“ドイツ人だからなんだ、同じ靴職人じゃないか"と連中を追っ払ってドイツ兵をベッドに運ぶ場面、取り分けクジミナの泣き顔にすげえ胸が痛くなる。

今でこそ大量に生産されている敵国の男女の愛の物語はあるも、それらは大体全てカラーフィルムで見ている分、モノクロ映画で見るとまた一味違う。

特にトーキー映画なんて、今の若者は中々見たりしないだろうし、驚いた事に物語の終盤で“皇帝がくたばればいいのに"と言う発言があるのだが、よくもまぁこの台詞が通ったな。

この映画ラストを見て戦争って無意味なんだなと思わされて、正直かなりこの歳になっても衝撃を受ける。

それと物語の終盤に差し掛かる時に流れる革命歌"ワルシャワ労働歌"が使われるのはなんとも素晴らしい大団円だ。

細かなディティールのリアリティー溢れるシークエンスが心から笑える。

ワシーリー・ヴェレシチャーギンの描いた2つの絵があるのだが「戦争の結末」と「致命傷」と言う作品の画像を本作を見る前に少し見て欲しい。‬

‪本作をまだ未見の方はお勧めする。B.バルネット作品は楽しいよ。‬