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J・エドガーの教授のレビュー・感想・評価

J・エドガー(2011年製作の映画)
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一言で言うと「女にはわかんねぇ世界があるんだ」っていう映画。
誤解を恐れずに言えば。
ゲイ的な世界、特にBL的な直接描写もあるにはあるけれど、映画はそれよりも苦く、繊細で、とてもめんどくさい感情を丹念に描いている。

「保守国家としてのアメリカ」の強い傘の下で、更にその、アメリカ的信仰の闇に抑圧されてきたのが、レオナルド・ディカプリオ演じる主人公のJ.エドガー・フーバー。母親からの強い抑圧と自身の強い虚栄心と鉄壁な保身の反面、表向きはFBIの創設から科学捜査の確率などで成果を上げる。
その乖離した人間性を冒頭はどこかシニカルに描き、正直このエドガーに対して「んにゃろー!」って胸糞悪い気持ちにさせられる。

しかし後半は一転し、アーミー・ハマー演じるトルソンとの純愛に昇華され、もはや、ジンワリと涙が出てくる。
また、プロポーズしたのにフッといて、ずっと連れ添ってきたナオミ・ワッツといい…なんだ、何気にエドガー、おめぇ、幸福じゃないかよ!っていう逆転劇。

ちなみに脚本を担当したダスティン・ランスブラックの想いを感じると余計に涙が出る。
本来ならば、エドガーという人間に対して否定的に描いても仕方がないものを、きちんと人間や社会を分析して、理解をして、きっちりと描いている。

やっぱりそれらを大きく声高にではなく、シンプルにシンプルに人間ドラマにまとめあげていくイーストウッドには参りました、という感じ。
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