緑雨

七人の侍の緑雨のレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
5.0
農民根性と武士道精神。日本人の血に流れる相反する二つの要素を余すところ無く盛り込んだ社会派ドラマでありながら、活劇としても最高級の質を実現しているという奇跡。

搾取され続ける百姓は、じっとしてこそこそ隠れているばかり。そうかと思えば実は落武者狩りをして武具を隠し持っていたり、食物や酒もあるところにはある。形勢が有利になれば一転して竹やりで集団リンチをしかける。いやらしいまでの農耕民族の生命力。

雇われた侍たちは、義理と恩情から命を賭して戦う。損得勘定を超越した、愚直なまでの義侠心。

七人を集めるまでの過程はユーモアを交えながら、各々のキャラクターの魅力にワクワクさせられる。

攻防戦が始まって以降の息をもつかせぬテンポ抜群の展開。集団から離脱しようとする離れ地に家のある百姓であるとか、勝四郎と百姓の娘の結ばれぬロマンスであるとか、サイドストーリーも充実。

武士も百姓も、それぞれの立場で生きるために懸命なのだ。顔の見えない悪役として描かれている野武士たちにも「そうせざるを得ない」事情があるはず。そんなことにまで思いを巡らせられる。
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